昭和館

特別企画展

戦後80年特別企画展
社会を映す、動かす―ポスターにあらわれる国策宣伝の姿―

図録販売中

開催趣旨

 昭和12年(1937)の日中戦争勃発以降、国民の戦意高揚を図るために国策宣伝が積極的に行われました。ポスターは視覚的に効率よく宣伝内容を印象付けるものとして重要視され、官民問わずさまざまな団体によって制作されます。それらは街中に貼られ、国民に国策への協力を広く呼びかけました。
 本企画展では、昭和館ポスターコレクションを通じて戦時下における国策宣伝について紹介します。

主催昭和館(厚生労働省委託事業)
後援千代田区・千代田区教育委員会
会期令和7年7月19日(土)~9月7日(日)
・前期:7月19日(土)~8月11日(月・祝)
・後期:8月13日(水)~9月7日(日)
※前期と後期で、一部展示資料の入れ替えを行います。
会場昭和館3階 特別企画展会場
入場料無料
開館時間 10時~17時30分(入館は17時まで)
休館日 毎週月曜日(7月21日、8月11日は開館、7月22日、8月12日は休館)
チラシ「社会を映す、動かす―ポスターにあらわれる国策宣伝の姿―」

展示構成

プロローグ:第一次世界大戦とポスター

 日本において、ポスターは商業広告の手段として大正期に普及しました。しかし大正3年(1914)に始まった第一次世界大戦以降、その役割は大きく変化します。第一次世界大戦は従来の戦争とは異なる総力戦となり、国策宣伝(プロパガンダ)によって国民に戦争協力を促すことが重視されました。特にポスターを用いたプロパガンダが注目され、日本にも大きな影響を与えます。
 これらのポスターを参考にして、日本の国策宣伝の技術、ポスターデザインの技術は大きく展開していきます。ここで培った技術は、昭和6年(1931)に勃発した満洲事変以降に本格化する国策宣伝の下地となりました。

『大戦ポスター集』

 第一次世界大戦のポスターを紹介する展覧会の図録。第一次世界大戦の参戦国が発行したポスターはデザイン性が高く、大きな宣伝効果があったとして日本でも注目された。

発行:朝日新聞社
               大正10年(1921)

「民心興れば国難去る」

 後の国民精神総動員運動につながる教化総動員運動のポスター。各市区町村や鉄道の各駅に配布された。

画:飛田周山、書:渋沢栄一、発行:文部省
               昭和4年(1929)

Ⅰ.国家主導の宣伝活動

 昭和12年(1937)に勃発した日中戦争以降の戦争は、国内の物資・人員をすべて注ぎ込まなければならない総力戦でした。そのため、国家総動員体制への理解を促すべく国民に対して国策宣伝が積極的に行われました。第一次世界大戦以降すでに宣伝活動に取り組んでいた軍部をはじめ、昭和11年に内閣情報委員会(後の内閣情報局)、昭和15年に大政翼賛会が発足し、国家による組織的な宣伝活動が展開されました。ポスターはこれらの国策運動をわかりやすく、印象的に伝えるためのメディアとして多用されます。

「週報」

 『週報』の販売促進ポスター。『週報』は昭和11年に内閣情報委員会によって刊行された雑誌。政策の解説や内外情勢や経済についての資料などが掲載された。

戦中

「国民総蹶起」

 大政翼賛会のポスター。戦局の悪化に伴って国民の総力をさらに集結するために、昭和19年5月から6月にかけて国民総決起運動が行われた。

図案:髙橋春人、発行:大政翼賛会・翼賛政治会
               昭和19年(1944)

Ⅱ.担い手と文化の動員

 国策宣伝のためのポスターの多くは図案家によって制作されました。彼らは戦前から商業ポスター制作の専門家として活躍していましたが、戦時下において商業広告の需要が減少したことを受け、国策宣伝に活動の場を移しました。報道技術研究会や日本宣伝技術家協会といった図案家の団体を結成し、内閣情報局などの依頼のもと、技巧を凝らしたポスターを多数制作しました。
 このような動きは図案家だけではなく著名な画家や漫画家にもおよび、日本漫画奉公会を結成するなど、多くの文化人も国策宣伝に協力しました。

「新日本民一億の総進軍」

 製薬会社の広告ポスター。製品に関する説明は記されておらず、防空服装の女性と当時の日本地図が描かれている。

発行:生盛薬剤株式会社
             昭和17 年(1942)頃

「貯蓄スルダケ強クナルオ国モ家モ」

 貯蓄運動のポスター。そろばんを持った女性を前面に出したデザインは、運動を効果的に表しているとして高い評価を得た。

図案:髙橋春人・山名文夫
       発行:大蔵省・日本宣伝技術家協会
               昭和17 年(1942)

Ⅲ.国策宣伝の多角的メディア展開

 ポスターは国策の内容を直接伝えるだけではなく、国策宣伝を担ったほかのメディアの情報を伝える役割も果たしていました。戦時下では新聞などのマスメディアをはじめ、展覧会などの催事に至るまで多種多様な手段が国策宣伝のために利用され、その内容が視覚的・感覚的に伝えられました。特にラジオや映画といった新しいメディアは、多くの人が同時に情報を共有できるという画期的な特性から、積極的に国策宣伝の手段として活用されます。

「挙つて国防 揃つてラヂオ」

 戦時下におけるラジオの重要性を説いたポスター。この標語は日本放送協会が行った公募で1位を獲得したもの。

発行:陸軍省・海軍省・内務省・逓信省
              昭和13年(1938)

「東洋の凱歌 バタアン、コレヒドール攻略戦」

 陸軍の比島派遣軍報道部による記録映画。昭和16年から翌17年にかけてのフィリピンでの陸軍南方作戦を記録したもの。編集などはすべて現地で行われた。

昭和17年(1942)

みどころ

館蔵の陸軍記念日ポスターを一挙公開!

当館所蔵の陸軍記念日ポスターを前期と後期あわせて5点展示します。

「勝つて兜の緒を締めよ」

 第33回陸軍記念日のポスター。同じ絵柄の絵はがきも制作され、陸軍記念日の普及と戦意高揚が図られた。

発行:陸軍省
               昭和13年(1938)

「撃ちてし止まむ」

 第38回陸軍記念日のポスター。古事記に由来する「撃ちてし止まむ」の標語は、戦意高揚を目的にて多方面で使用された。

画:宮本三郎、発行:陸軍省 
               昭和18年(1943)

著名な画家・漫画家の国策宣伝ポスターを展示!

横山大観、横山隆一など、著名画家・漫画家の国策宣伝ポスターを展示します。

国民精神総動員 雄飛報国之秋」(左)・「国民精神総動員 天壌無窮」(右)
 国民精神総動員運動を周知するポスター。文部省に依頼を受けた日本画家の竹内栖鳳と横山大観が手がけた。ポスターは学校などに掲示され、翌年には同じ絵柄の絵はがきが25 万枚発行された。

画:竹内栖鳳(左)・横山大観(右)、発行:文部省
                                      昭和12 年(1937)

イベント情報

(1)ワークショップ ポスターバッグづくり

開催日8月9日(土)、8月23日(土)          
時  間13:00~16:00
場  所3階会議室

(2)展示解説

担当者による展示解説を行います。

開催日7月27日(日)、8月31日(日)         
日  時14:30~(所要時間30分)
会  場3階特別企画展会場

お問い合わせ

〒102-0074 東京都千代田区九段南1-6-1 昭和館学芸部 土屋・髙木
TEL.03-3222-2577

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