昭和館

特別企画展

生誕100周年・没後30周年記念 中原淳一の生きた戦中・戦後 ~少女像にこめた夢と憧れ~

この特別企画展は平成25年3月16日(土)~5月12日(日)に開催され、好評の内に終了しました。

開催主旨

 中原淳一は大正2年(1913)に生まれ、昭和58年(1983)に没した、昭和を代表する画家でありファッションデザイナーです。雑誌『少女の友』の表紙絵や附録などを手がけ、一躍、人気画家になりました。また、戦中は慰問絵はがきを多く制作し、戦地に赴いた兵士たちの心を慰めましたが、その西洋的な画風が軍部からにらまれ、『少女の友』に作品が掲載することができなくなっていきました。
 しかし、戦争が終わるとすぐに創作活動を再開、21年8月に『ソレイユ』(後に『それいゆ』)を自ら創刊し、物資が不足している中でも豊かに生活する方法を提唱し、世の女性たちに夢と希望を与えて復興への原動力となりました。
 本展は、生誕100周年と没後30周年を記念し、これまであまり紹介されることがなかった特に戦中・戦後の活動にスポットをあて、彼の業績を紹介します。また、戦地への慰問品や、スタイル画から再現した洋服と当時の服装を併せて展示するなど、戦中・戦後の世相をテーマを設けて展示します。

主催昭和館
企画協力・監修株式会社ひまわりや
会期平成25年3月16日(土)~5月12日(日)
会場昭和館3階 特別企画展会場
入場料無料(常設展示室は有料)

展示構成

l.プロローグ

  1. 生い立ち
  2. 人形作家としてデビュー
  3. 『少女の友』挿し絵画家として

ポスター「PK人形クラブ第3回展」

 昭和6年 (1931)に結成された、創作人形作家グループ「PK人形クラブ」作品展のポスター。淳一も早い段階から同グループに名を連ねていた。翌年(19歳)には、初めて個展を開催し、人形作家として絶大な人気を博した。

『少女の友』8月号

 淳一が描いた表紙。淳一は昭和7年(1932)から『少女の友』と専属契約を結び、挿し絵や附録の企画・デザインを担当した。10年1月号からは表紙も担当するようになった。

昭和13年(1938)8月

啄木かるた

 『少女の友』昭和14年(1939)1月号の附録。淳一が企画した附録は、彼の挿し絵とともに爆発的な人気を呼び、『少女の友』の売れ行きも倍増した。

「花物語 上巻」(扉絵原画)

 吉屋信子作の少女小説『花物語』単行本の扉絵の原画。大正時代に断続的に連載されたものを、『少女の友』に昭和12年(1937)から2年間にわたり再録。淳一が挿し絵を担当した。

昭和14年(1939)
株式会社ひまわりや蔵

© JUNICHI NAKAHARA / ひまわりや

 

ll.迫り来る戦火

1.「ヒマワリ」開店
2.『少女の友』への掲載中止
3.海軍への召集

『きものノ絵本』

 淳一初の単行本として、昭和15年(1940)から発刊されたスタイルブック。14年に麹町に開店した服飾雑貨と洋裁の店「ヒマワリ」から通信販売により販売された。淳一の復員後、21年にも内容をかえ再度発行された。

昭和16年(1941)6月

はがき

 女子挺身隊として勤務していた女性が友人から受け取ったはがき。淳一の慰問絵はがきを使用している。

昭和19年(1944)8月

『少女の友』6月号(左)/『少女の友』7月号(表紙・宮本三郎画)(右)

 淳一の描く西洋風の夢見る瞳の少女像が、世相にそぐわないと軍部から圧力がかかった。淳一には軍の意向に沿って画風を変える意志はなかった。しかし、何人もの友人が戦争で命を奪われるという状況の中で、甘く優しい少女の夢を育てるような仕事をしていて良いのかという気持ちが高まり、6年間続けてきた『少女の友』表紙絵作画についに別れを告げることとなった。

昭和15年(1940)6月、7月

© JUNICHI NAKAHARA / ひまわりや

テーマ展示 戦地への慰問品

 戦地の兵士慰問のために、日用品や食料品、手紙などを入れた慰問袋が作られた。その中には、故郷とやりとりするためのはがきも入れられた。淳一の絵がデザインされた絵はがきは慰問品として市販されていた。

「千人針」(慰問絵はがき)

淳一がデザインした絵はがき。

少女慰問しをり

 戦地慰問品として販売されていた、淳一が描いた少女の顔のしおり。

「フランス人形羽子板と皇軍慰問のマスコット人形の作り方」

 淳一による、手芸作品の解説記事。慰問袋に入れるマスコット人形を取りあげている。
『主婦之友』1月号に掲載。

昭和13年(1938)1月

(参考出品)慰問人形

 戦地慰問品として送られた、少女をかたどった手製の人形。

テーマ展示 戦中・戦後の服装

 淳一は婦人服、子供服のデザイン画を多く発表している。淳一がデザインした洋服を実際に復元し、それと当時着用されていた洋服を比較して、そのデザイン性を見る。

防空服

『ヒマワリ型紙 防空・防寒・作業服』より

防空服(復元)

 『ヒマワリ型紙 防空・防寒・作業服』に紹介されている防空服を復元した。

協力:後藤スミ子

子どものワンピース

『子供のキモノ』昭和16年(1941)に掲載

子どものワンピース(復元)

 『子供のキモノ』(昭和16年発行)に掲載された「白い刺繍のワンピース」を元に復元した。淳一は「小さな共布のカラーをつけてもいいでしょう、襟ぐりにそって幾色かの刺繍糸か毛糸でステッチ、裾にもそれをくりかえします。生地は無地に限ります」と解説している。

協力:中西弥生

© JUNICHI NAKAHARA / ひまわりや

lll 新たな構想

1.ヒマワリ社の再出発
2.物資不足下の工夫と心づかい
3.『ソレイユ』と『ひまわり』創刊
4.様々な活動

箱「ひまわりブラウス」

 「ヒマワリ社」で販売されたブラウスの箱。
麹町区(現・千代田区)麹町にあった「ヒマワリ」は戦災にあったため、昭和21年(1946)に神田神保町に店を構えた。店頭と通信販売で、スタイルブック、服飾品、文具など淳一オリジナルグッズを扱っていた。

『ソレイユ』3

 昭和20年(1945)8月に復員した淳一は、自分の手で雑誌を創刊しようと考え準備を進め、翌21年8月に『ソレイユ』の刊行に踏み切った。創刊号はたちまち売り切れ、2号以降を製作するために「ヒマワリ社」を設立した。
昭和22年(1947)3月

原画「四ツ葉のクローバー」

『ひまわり』昭和25年(1950)2月号中のカット。

株式会社ひまわりや 蔵

ポスター「レートジュニアクリーム」

 子ども用化粧品のポスター。このクリームのパッケージデザインも淳一が手がけた。

昭和28年(1953)頃

© JUNICHI NAKAHARA / ひまわりや

テーマ展示 戦後の雑誌創刊ブーム

 戦後出版の自由が回復すると、多くの雑誌が創刊された。淳一も昭和21年(1946)8月に『ソレイユ』をいち早く創刊し、女性達に夢と希望を与えた。そのブームの中では、それまで見られなかった、暴露や過激な風俗を扱った「カストリ雑誌」と呼ばれた雑誌も登場した。

(参考出品)

『猟奇』 創刊号

昭和21年(1946)10月

テーマ展示 人気のあまりの「ニセジュン」

 淳一が描く少女が女性達に人気があったため、淳一に似せたイラストを使用した、さまざまなものが出回った。女性達はそれらを「ニセジュン」と呼んだ。

(参考出品)

羽子板

淳一の作風を似せた少女像が描かれている。

lV エピローグ

1.館山での療養生活
2.『女の部屋』

『ジュニアそれいゆ』№10

 昭和26年(1951)パリへ旅立った淳一は、3年の滞在予定を前倒しして帰国した。そして『ひまわり』に替わり、パリ滞在中に構想していた新しい少女雑誌『ジュニアそれいゆ』を創刊した。

昭和31年(1956)7月

中原淳一

昭和45年(1970)頃
株式会社ひまわりや提供

© JUNICHI NAKAHARA / ひまわりや

 

イベント

(1)ミニ講演会

中原芙蓉氏(淳一長女)にお話しをしていただく。

終了しました

タイトル「父の想い出」
日時4月13日(土) 14:00~15:00
会場昭和館1階ニュースシアター
定員60名(13時から整理券を配布します)

※手話通訳あり。ご希望の方は10日前までに昭和館総務部へお申し込み下さい。期限を過ぎた場合は、ご意向にそえない場合がございますのでご了承下さい。

(2)工作教室

中原淳一が考案した、余った毛糸を使って可愛らしい花を作る体験ができます。

日時3月30日(土)・31日(日) ①11:30~12:00、②15:00~15:30
会場昭和館2階ひろば

(3)大道芸

バイオリン演歌 (30日)、 バナナのたたき売り (31日)、南京玉すだれ (30・31日) など。

日時3月30日(土)・3月31日(日) ①11:00~11:45、②13:00~13:45、③15:15~16:00
会場昭和館2階ひろば

(4)お花見イベント

日時4月6日(土)・4月7日(日) 11:00~15:30

梅田佳声さんによる紙芝居上演  ①11:00~11:45、②12:30~13:15、③14:30~14:45
大道芸 南京玉すだれ、バナナのたたき売りなど。 ①11:45~12:30、②13:15~14:00、③14:45~15:30
昔の遊び 昔ながらの輪投げや剣玉・お手玉・あやとりなど、戦中・戦後の時代によく使われた玩具を自由に手に取って遊ぶことができます。
会場昭和館2階ひろば

(5)展示解説

担当学芸員が特別企画展の解説を行います。(所用時間 約45分)

日時3月30日(土)・4月20日(土) 14:00~
会場昭和館3階特別企画展会場

図録(完売しました)

開催平成25年3月
タイトル生誕100周年・没後30周年記念 中原淳一の生きた戦中・戦後~少女像にこめた夢と憧れ~
在庫※在庫なし
目次情報Ⅰ プロローグ
 1,生い立ち
 2,人形作家としてデビュー
 3,『少女の友』挿し絵画家として

Ⅱ 迫り来る戦火
 1,「ヒマワリ」開店
 2,『少女の友』への掲載中止
 3,海軍への召集
 テーマ展示 戦地への慰問品

Ⅲ 新たな構想
 1,ヒマワリ社の再出発
 2,物資不足下の工夫と心づかい
 3,『ソレイユ』と『ひまわり』創刊
 4,様々な活動
 テーマ展示 戦後の雑誌創刊ブーム
 テーマ展示 人気のあまりの「ニセジュン」

Ⅳ エピローグ
 1,館山での療養生活
 2,『女の部屋』
 テーマ展示 戦中の服装
 テーマ展示 戦後の服装

年譜

女性たちに夢と希望を与える 学芸部 財満幸恵

出品目録

絵はがき(完売しました)

タイトル中原淳一の生きた戦中・戦後~少女像にこめた夢と憧れ~
在庫在庫なし
価格300円(税込)
見本絵はがき見本

お問い合わせ

〒102-0074 東京都千代田区九段南1-6-1 昭和館学芸部
TEL.03-3222-2577
※手話通訳の申し込み:昭和館総務部

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第J190926935号