5階 映像・音響室に設置している、試聴機コーナーのSPレコード音源を入替えました。
試聴機コーナーは、昭和館で所蔵している戦前・戦中・戦後のSPレコード(昭和30年代後半ごろまで一般的に使用されていた78回転のレコード盤)からとった流行曲、芸能、童謡などの音源を気軽に試聴できるコーナーです。ぜひご利用ください。
● 流行歌・歌謡曲 「あのひと」が作詞した歌
① 婦選の歌
② ジャングル・ブギー
③ リラの花咲くころ
いわゆる“流行歌の作詞家”ではない著名人が作詞を手がけたレコードを紹介します。
日本では大正時代から活発になった女性参政権運動に呼応して、昭和5年(1903)婦人参政権獲得同盟のために①『婦選の歌』を書いたのは歌人の与謝野晶子(よさの・あきこ1878-1942)です。映画『酔いどれ天使』の劇中で笠置シヅ子(かさぎ・しづこ1914-1985)が歌う②『ジャングル・ブギー』の作詞をしたのは、同映画の監督でもある黒澤明(くろさわ・あきら1910-1998)です。③『リラの花咲くころ』は、日本では一般的に宝塚歌劇の『すみれの花咲く頃』として知られる楽曲ですが、画家やデザイナーとして有名な中原淳一(なかはら・じゅんいち1913-1983)がドイツ語の原詞やフランス語版に近い“リラ(=ライラック)の花”として訳詞したバージョンです。
● 戦時歌謡 国策宣伝レコード
① 艦隊勤務「月月火水木金金」
② あの旗を射たせて下さい
③ あの旗を撃て
9月7日まで、昭和館3階で開催している特別企画展『社会を映す、動かす ポスターにあらわれる国策宣伝の姿』に関連して、戦中の日本で国策宣伝のために制作されたレコードを紹介します。
休日返上で厳しい訓練を実施していた海軍の「月月火水木金金」という合言葉を取り入れた①『艦隊勤務「月月火水木金金」』は、日中戦争中の昭和15年(1940)に海軍出身の作曲家である江口夜詩(えぐち・よし1903-1978)が作曲した楽曲です。②『あの旗を射たせて下さい』は昭和17年(1942)に大政翼賛会が制作した壁新聞をもとにしたレコードで、朗読を担当している俳優の丸山定夫(まるやま・さだお1901-1945)は太平洋戦争中、劇団「桜隊」に所属し、昭和20年(1945)慰問のために滞在していた広島で被爆して亡くなりました。③『あの旗を撃て』は陸軍報道部が企画し、東宝が制作した日本とフィリピンの合作映画『あの旗を撃て』の主題歌で、作曲を手がけたのは古関裕而(こせき・ゆうじ1909-1989)です。
● 童謡 『われは海の子』ききくらべ
① 我は海の子(1943年頃)
② 我は海の子(1943年頃)
③ われは海の子(1958年)
現在、小学校の教科書に載っている『われは海の子』の歌詞は3節までですが、明治43年(1910)に尋常小学校の教科書に掲載されたオリジナルは7節まであり、最後の7節は「いで軍艦に乗組みて我は護らん海の国」という軍国的な文言でしめくくられていました。
太平洋戦争中の昭和18年(1943)に発行された①『我は海の子』では、1~5節と7節が歌われています。②『我は海の子』も①と同じ頃の発行ですが、収録時間の短い子ども向けのレコードで、戦前に吹き込まれた音源の再盤だったためか、1~4節までで、軍国的な歌詞の7節はありません。③は戦後の昭和33年(1958)、のちに声楽家として有名になる安田祥子(やすだ・さちこ1941-)が童謡歌手だった頃に吹き込んだもので、1~2節と4~5節が歌われています。
映像・音響室では、上記のほかにも約17000点のSPレコード音源を公開しています。また、昭和館デジタルアーカイブでも音源の一部を試聴できます。