5階 映像・音響室に設置している、試聴機コーナーのSPレコード音源を入替えました。
試聴機コーナーは、昭和館で所蔵している戦前・戦中・戦後のSPレコード(昭和30年代後半ごろまで一般的に使用されていた78回転のレコード盤)からとった流行曲、芸能、童謡などの音源を気軽に試聴いただくためのコーナーです。現在は以下の音源を試聴することができます。ぜひご利用ください。
● 流行歌・歌謡曲 『宵待草』ききくらべ
① 宵待草(1936年)⇒ ♪こちらは昭和館デジタルアーカイブでも試聴できます
② 宵待草(1938年)
③ 宵待草(1946年)
画家で詩人としても有名な竹久夢二(たけひさ・ゆめじ1884-1934)の作詞、多忠亮(おおの・ただすけ1895-1929)の作曲による『宵待草』は、様々な実演家によるSPレコードが残されていますが、そのなかから3曲を紹介します。
①は戦前の日本を代表するオペラ歌手の一人、三浦環(みうら・たまき1884-1946)の歌唱による音源です。②は、歌う映画スターのさきがけともいわれる高峰三枝子(たかみね・みえこ1918-1990)が楽曲と同名の映画『宵待草』の主題歌として吹き込んだ音源で、もとの詩にはなかった歌詞を、西條八十(さいじょう・やそ1892-1970)が付けたしています。③は戦後に発行されたレコードの音源で、高峰と同じく歌手としても活躍した俳優の山口淑子(やまぐち・よしこ=李香蘭 り・こうらん 1920-2014)が歌い、古賀政男(こが・まさお1904-1978)が編曲を担当しています。
● 芸能・音曲 歌舞伎俳優 六代目尾上菊五郎
① 白浪五人男(濱松屋の場)
② 髪結新三(永代橋々詰の場)
③ め組の喧嘩(神明社内芝居前の場)
今年の5月、歌舞伎俳優の五代目尾上菊之助さんが八代目尾上菊五郎を襲名しますが、SPレコードの時代の菊五郎といえば六代目尾上菊五郎(ろくだいめ おのえ・きくごろう1885-1949)です。
同年代の初代中村吉右衛門(しょだい なかむら・きちえもん1886-1954)とともに「菊吉」と称され、戦前・戦後を代表する歌舞伎俳優として知られる六代目菊五郎が残したSPレコードの多くは、「世話物」と呼ばれる江戸時代の人々にとっての現代劇であり、市井の人々の世界で繰り広げられる演目の音源で、①『白浪五人男』では武家の娘に化けた盗賊の弁天小僧、②『髪結新三』では裏の顔を持つ髪結いの新三郎、③『め組の喧嘩』では鳶頭のめ組の辰五郎を演じています。
● 童謡 童謡~ご当地発車メロディー~
① シャボン玉
② みかんの花咲く丘
③ おさるのかごや
現在、駅の「ご当地発車メロディー」として採用されている楽曲には、戦前・戦後から人々に親しまれ、SPレコードが発行されたものが多くあります。そのなかから、童謡を3曲紹介します。
JR常磐線湯本駅の発車メロディー①『シャボン玉』は、作詞をした野口雨情(のぐち・うじょう1882-1945)が大正時代に同地のいわき湯本温泉に滞在していたことから採用されました。JR東海道本線と御殿場線が通る、国府津(こうづ)駅の発車メロディー②『みかんの花咲く丘』には、作曲者の海沼實(かいぬま・みのる1909-1971)が、列車の車窓から国府津付近のみかん畑の景色を見て曲が浮かんだというエピソードがあります。東海道新幹線をはじめとする路線のターミナル駅である小田原駅のメロディー③『おさるのかごや』は、歌詞に小田原に縁ある“小田原提灯”が登場します。楽曲が作られたのは昭和13年(1938)ですが、③は戦後に発行された「歌とお話」のレコードの音源で、歌手やタレントとして活躍した中村メイ子(なかむら・めいこ1934-2023)が出演しています。